心の旅のお作法

妙齢からの、己を知る道、心のお散歩(笑)

その湖を愛するなら。

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人というものは、その人が会う人の数だけ、違う顔を持っていると思う。
もちろん、一人の時の顔もあり、それはその人にしか分からない。
一人の時の顔なんて、その人が自分を客観視することができれば、の話だけれども。

あたくしは、今年、たくさんの愚かな失敗をしたが、恐らく最大の失敗を先日、した。
大好きな逆転移の彼に対して、交友関係に口を出してしまったのだ。
「その人とは距離を置いた方がいい」みたいな。
もちろん彼に相談され、「その人とは今後、どうしたらいいでしょう?」と聞かれたから言ったのだ。
「あくまでもあたくしの意見だよ?」と、念を押して、あたくしは言ってみた。
だけど大失敗だ!
だけど、一度、口から出たことは引っ込まない。

このことは、カウンセラーの先生にも告白した。
「言ってる内容自体は悪くはないんじゃないか?」と先生は言ってくれた。
あたくしは、彼に「できるだけ健全な心の人と付き合ってもらいたい」と言ったのだ。
その友人は、異性だったし、心も暮らしも荒んでいる。
あたくしは、そんな人が彼の心に寄りかかり、彼を蝕むのを過度に恐れた。
全般性不安障害だ(笑)

この文章を読んでいる人の中には心が病んでいる人もいるだろうから、今日の文章は、嫌な気分になるかもしれない。
ごめんなさい。
あたくし自身、2週に1回カウンセラーに話を聞いてもらわなければ心を保てない人間だし、自分だって健全な側の人だとは少しも思っていないのだけれど…。
その友人に対しては、どうしても、許せないことがあったのだ。
少しあたくしは怒りを出してしまったかもしれない。



失敗だな、と思ったのは、それからその友人とのやりとりについて、逆転移の彼がその後、自ら話すことがなくなったからだ。

質問すれば誠実に話してくれるのは分かっているのだけれど、自分は後悔の念でいっぱいで、もうそんなことは二度と言うまい、水を向けるまい、と思った。
彼がその困った友人と今も交友関係を続けているのを、あたくしは知っている。
それは、何もあたくしに嘘をついたり隠したりしているのではなく、恐らく、彼の交友関係に意見した時のあたくしが、思わず心を波立たせたのを見てしまったからだと思う。

それが、彼を思う気持ちからであったのはもちろんであるが、そこには実は嫉妬だって含まれていた。
その嫉妬心は、もちろんカウンセラーの先生に見抜かれてしまったし、繊細な彼だって気付いたろう。
そういう訳で、あたくしは何でも話せる人でありたかったのに、自分からその関係を壊してしまったのだ。
何にしても失格なのだ。

それなのに、彼との面談は表層的に陥ることなく、その交友関係だけを巧妙にマスキングして、不思議なことに、さらにも深まっている…ように思える。
面談で彼は、小学生の時の話をしてくれた。
小学生の時に、してみたかったけど、恥ずかしくてどうしてもできなかったこと、なんかの話をしてくれた。
そうして、自分も小学生の時の話をした。
あたくしも、こんなささいなことがどうにも恥ずかしくてできなかったよ、と。
それから、今なら大丈夫、あなた、出来るんだよ? と励ました。



心の奥底で、自分には彼をどうすることもできないことは理解している。
彼が新しいことを感じたり体験するのを止められないことは分かっている。
失敗するかもしれないと止めさせようとするのではなく、失敗しても変わらず温かく受け入れられる人になりたいのだ。
自分の言いなりにならない人は助けたくない、と言うつもりもない。
そんなことはあたくしの理想じゃないし、彼には求めていない。
自由で屈託のない、素直で律儀な彼が好きなのだから。

だけど、ただ苦しいのだ。

あたくしは、静かで清らかな水をたたえた「彼」という湖が大好きだ。
だから、その湖を愛するなら、形を変えようなんて思ってはいけない。
ただ、ほとりに佇んで、湖面のさざ波を見守っていたいのだ。
その湖の存在を愛おしく思いながら。

「もう、誰も愛せないんです!」とカウンセラーの先生の前で泣いたことがある。
「愛している時の気持ちが邪魔っけで、切り取りたい!」と訴えたこともある。
しかし、それに比べたら、今の気持ちは、辛いけれど、何と甘美なんだろう。

「悪いな、と言いながら、君はそれを甘美な気持ちとして味わっているね?」
と、先生はあたくしを諭した。
もっと、ちゃんと反省しなさいと。

皆さま、Merry Christmas !

今日、きっと彼は、あたくしが「距離を置いて欲しい」と言った人と会っている。

そこで彼は、あたくしの前で見せる顔とは別の顔をしているに違いない。
だけれども、あたくしの前の彼だって、本当の彼なのだ。
誰だって、他の誰かに取って代わることなんてできない。
自分は自分として、自分の役割を全うして、丁寧に向き合っていくしかないんだ。

初志貫徹しかないのだ。

愛するということ 新訳版

愛するということ 新訳版

 

※あまりに逆転移が苦しくて、ついにこの本に手を伸ばしてしまった。愛することはテクニックだとこの本は説く。だったらテクニシャンにならなきゃね、と妙齢の女性は強く思うのだったよ。