心の旅のお作法

妙齢からの、己を知る道、心のお散歩(笑)

あなたが忘れても、あたくしは忘れない。

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ここんとこ、ずっとこの場に綴ってきたあたくしの大切な相談者なんですが…。
 
突然、別れを切り出されました。
そう、相談の終結願いの申し出です。
 
それを聞いた途端、あたくしの頭は、真っ白!
多分、相手から見ても一目瞭然でそう見えたでしょう。
 
彼は、そんなあたくしを気遣い、ゆっくりと言葉を選びながら、言った。
「やりたいことが見つかったから、早く次に進みたい」
 
その時に、自分は…自分は…彼の人生の一部分にしか関われない、儚い存在なんだなぁ、と、自覚せざるを得ませんでした。
 
いつ終結にするのかは後ほど話すことにしてその日は終わったのだけれど、あたくしはその日1日を乗り切ることができず、同僚にちょっと中座することを伝えて、非常階段でオイオイ泣いた。
まさか、この仕事で、声を上げて泣くようなことになるとは。
そして、それが彼のことになろうとは。
 
 
 
あたくしには、まだ彼と片付けたい課題がたくさんある。もっと、もっと…。
でも、彼はもう自分で課題を見出して、どうすればいいか自分で決められるようになったんだ…。
 
それは、あたくしが彼に求めてきた理想像。
彼は、あたくしの助言を、実に忠実に実行に移し、着々と成長してきたのだった。
ここ数ヶ月の彼の成長ぶりは目覚ましく、それは、彼を知る人なら誰しも感じただろう。
それは本当に眩しいくらいだった。
 
あたくしは、透き通った美しいブルーの羽をゆっくりと伸ばしていく、羽化したての蝉を思い出した。
 
彼から憂いの表情が少なくなり、自分のコンプレックスに向き合って、ちゃんと人に語れるようになった。
彼は今もたくさんの解決しきれない問題を抱えているけれど、それらとも上手くお付き合いしながら生きていけるようになりつつある。
そう、彼は、以前よりチョッピリ自信を持って自分を愛せるようになったのだ。
世の中に出て、多少は世間の波に揉まれても、へこたれずにそこから何かを掴んで成長していけそうなくらいに。
 
だから、あたくしの涙はとても複雑だった。
彼はあたしを信頼して付いてきてくれた。
そうして彼は、本来の健全な彼を、あたしに見せてくれた。
これが、本当の彼なんだ。
 
オドオドと上目遣いにあたくしの表情を伺いつつ話していたかつての彼はもう消え去って、目の前の、相手を気遣いながら自己主張できる彼が…あたくしが会いたかった真の彼だ。
 
喜びと悲しみが同時にドッと訪れて、素直に彼の成長を喜べない自分が恨めしかった。
何と小さな自分!
 
こんな未熟な自分に、彼は愚直とも言える忠実さで慕ってくれたんだ。
間違ってはいなかったと、あたくしは思いたい。
あたくしに依存することなく、独り立ちしようと考えてくれたんだもの。
夢が全て叶って、これ以上、何を望もう?
 
でも、自分が彼に何でも与えられる万能の神でないのが辛い。
こんな形で自分の限界を自覚しなくてはいけないのが辛い。
 
 
 
あたくしは、彼に向かって必死にたくさんの言葉を投げかけてきたけれど、それらをいくつくらい覚えてくれているだろう?
 
あなたは、世界でたった一人の素晴らしい子。
どこまでも全力で守るから、信じてほしい。
神様があなたの存在を許しているのだから、あなたを否定する奴がいたとしても無視しなさい。
怒りは洗練させて表現できるようになれば、押し殺さないで良くなるよ?
あなたに今足りないのは、自信と勇気だけ!
もっと、自分の権利を堂々と主張しなさい。
わたしはあなたの担当だから、他の人のことなんてどうでもいい、あなただけが心配。
etc…
 
もう、こんな気持ちには二度となりたくないし、もう、こんな気持ちになる人と出会うこともないだろう。
彼は、本当に、あたくしにとって特別だった。
なんだか理由はわからないけれど、彼はあたくに不思議な化学変化を起こさせる特別な存在。
もう、あとは死ぬばかり…と思っていた自分に、生まれて初めて味わう感情をたくさん与えてくれた人。
だからちょっと、あたくしは入れ込みすぎちゃったよ…。
 
あたくしが、人の将来を憂えて眠れなくなることになるなんて、考えたことすらなかった。
本来のあたくしは、スーパーエゴイストだからね(笑)。
 
到底不可能なことなのだけど、残り少ない時間に、どうやって伝えたいことを全部盛りするか、そればかり考えている。
彼の前で、涙を流してしまわないか、心配でたまらない。
 
そうして、心から願っている。
これからは、もっとたくさんの人に愛されて、どんどん幸せにおなり? と。
 
 
あなたはあたくしの最高傑作なんだから。