トラウマ経験者、ヨガへの偏見を克服する。
ヨガがストレスの軽減に良いらしい、ということは知識的には知っている。
ヨガで鬱を解消して、今は嘘のように元気だよ〜!というブログとかも読んだことがある。
だがしかし、これまでの経験から不幸なことに、あたくしはヨガにむちゃくちゃ偏見を持ってる。
身近で「ヨガいいよ〜♪ ハマってるよ〜♪」っていう人に詳しく話を聞くと、
「え? 瞑想とか宗教的なことは一切しないよ!」
と、明るく言う。え? ヨガなのに瞑想しないの? とここで疑問が生じる。
その人の、瞑想=宗教的というの捉え方も引っかかる。何を教わっているのだろう?
それで、ヨガの何がいいのか根掘り葉掘り聞くと、海辺や古民家、スタジアムにお洒落な格好をして集い、帰りに仲間とビールを飲むのが楽しいらしい。
そうですか、ビールは楽しそうだけれど、それはあたくしが求めてる類のヨガではない…と、以来、深くは突っ込んでいない。
あと、人から「このヨガの先生は、いい」と紹介されたこともある。
あたくしが具合悪そうなんで、あくまでも善意で教えてくれたんである。
せっかくだし、と足を運んでみる気になった。
その時の先生のヨガが、あたくしにとっての最初(で最後になるかも)のヨガ体験となる。
会場をグルッと見回すと、気張ったヨガファッションで来ている人もいるけど、ジャージの人もいて、気が楽。
基礎的なポーズから始まり、どんな風に呼吸をすればいいかも丁寧に説明してくれて好感が持てた。これなら大丈夫かも…。
しかし、その後がいけませんや。
先生は、病気を治癒させる不思議な力があるらしく、来場者ももちろんご存知なので、そこはかとなく何か面白いものを期待している雰囲気がお教室に充満しているのだった。もちろんあたくしもその件は耳に入れてるので、やるなら早く見せて!とは思っていた(笑)。
先生が前の方に立っている生徒の手首をやにわにグイっと掴むと、その人はピョンコピョンコと飛び跳ね始めた。
どうやら、先生のエネルギーを生徒に注入したために、生徒さんは不随意運動をしているらしい。
あちゃあ〜〜〜〜!
そうして、さあ皆さん、隣の人と手の平を合わせて、エネルギーを感じ合いましょう! とかいうことになった。
あたくしという人が悪いのは、事前に予約を入れていたとはいえ、また同じ人がピョンコピョンコするかどうか確かめに、後日、もう一度足を運んでしまったこと(ちゃんと違う人がピョンコピョンコしてましたとも(笑))。
ああ、もう絶対にダメ、無理! と、あたくしはヨガマットを押入れに封印した。
そうして、失意のどん底に落ちたあたくしが、まだヨガへの期待を捨てきれなくって手に取った本が、これ…。
『トラウマをヨーガで克服する』ディビッド・エマーソン著
トラウマを持った人がヨガでリラクゼーションを試みるときの注意点、ポイントなどが書かれている。
これを読んで、ヨガ教室で感じた居心地の悪さ(超能力披露は別としても)が何だったのか良く分かった。
どうやらトラウマ経験者がヨガを行う時には、身体の安全に関する特別な配慮が必要らしい。
パーソナルスペースを十分取るとか、他者からの接触をコントロールするとかね。
(あたくしの場合は、見知らぬ人とペアになるとか、手を添えてもらうとかがダメだった)
この本の素晴らしいところは、トラウマの当事者のみならず、ヨガインストラクターに向けて「トラウマを持つ人がセラピー目的でヨガをする時はこうしたらいい」と具体例を挙げて解説しているあたりだろう。
軽々しく「癒し」とか言っているヨガインストラクター全員に読んでもらいたいくらいだ。
とはいえ、この本はあくまでもアメリカのトラウマ治療の最前線が書かれたもので、残念ながら日本でこんなヨガができる教室は皆無っぽい。
本で紹介されるトラウマケアの講習を受けたヨガインストラクターは日本にもいるみたいなんだけど、実践している教室が見当たらない。
資格取った人たちはみんなどうしてるのか? 持ってるだけで満足?
今の一大ビジネス的ヨガブームには全く興味ないんだけど、これが落ち着いた頃にでも、トラウマサバイバーが気軽に参加できるような優しいヨガ教室がでてくるといいなあ〜と、今日も一人、布団の上で三点倒立の練習をやるあたくしなのです。
- 作者: デイヴィッドエマーソン,エリザベスホッパー,David Emerson,Elizabeth Hopper,伊藤久子
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2011/12/22
- メディア: 単行本
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