心の旅のお作法

妙齢からの、己を知る道、心のお散歩(笑)

側にいるだけで。

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あたくしの、師匠であるカウンセラーの先生は、常々言う。
「その人の側にいるだけでいいんだよ?」

でもねぇ、相談者としてそれは難しい。
相談者からただ側にいて欲しいと所望されることはほとんどない。
あまりにも消極的でしょ?

大抵は、明確な答え、的確なアドバイス、具体的な指示(時には命令)が欲しい、と希望される。

たまに、ただ黙って愚痴を聞いて欲しい、というのもある。
評価されたくない、という気持ちは分からないでもない。
ただし、それは「その人の側にいるだけ」というニュアンスとは、ちと違う気がする。

引きこもりで全般性不安障害でパニック症状持ちだったあたくしが、このように世の中に出て、人と関わりを持てるようになったことは、あたくしにとっては夢のようなことだ。

まだ、カウンセリングが始まったばかりの時には、あたくしは何度かカウンセリングの時間を「治療」と表現したけれど、先生はその都度「これは治療じゃないよ」とあたくしの言葉を訂正した。
治療という言葉は、いわゆる医師法に抵触する表現だから? と解釈していたけれど、今、思うに、そういう訳ではないようだ。

あたくしは未だに頭の片隅で、先生が何かの魔法(あるいは、ある種の心理療法)を用いてあたくしのトラウマを処理し、社会の海に押し出してくれた…と、思い込んでいる。
だから、先生の使った魔法を教えてもらいたいし、自分も機会があれば使ってみたいくらいに思ってる。
でも、先生は「僕は、何にもしてないよ? ホントに」と念を押すのだ。
それは、手品を見て目をパチクリさせている子に「種も仕掛けもございません」と嘯(うそぶ)くマジシャンみたいな感じで。

あぁ、先生の嘘つき! ケチンボ! 教えてよ!と、あたくしはずっと思ってた。

でも最近、そうかもしれない…と、先生は、本当のことを言っているような気がしてきた。



最近読んだ本、
「実践入門 解離の心理療法ー初回面接からフォローアップまで」細澤 仁著
は、何人かの解離性障害の相談者と接したことがきっかけで手に取った本だ。
ここに何か魔法の使い方が書いてあるのでは? と期待を持って手に取ったのだ。
あたくしは、魔法にすがりたいくらい途方に暮れていた。
力づくでなんとかしたいと思うくらいに、あたくしの心は煩悩まみれになった。
あたくしだけ力(りき)んでもどうしようもないのに…。

だけどそこには、必要なのは「根性」と書いてあった(笑)。
そうして、「根性」は鍛えられないとも…。

この本には魔法らしきものは何も書かれていなかったけれど、そこには転移と逆転移についての詳細な説明があり、あたくしは非常に満足した。
それに、あたくしにはさほど「根性」があるとは思えないけれど、そういう人も「それなりに」人を助けることは可能であろう…的なことが書いてあった。

打つ手もなく、無力感に苛まれている人の傍にひっそりと寄り添い、一緒に無力感を感じる体験が、相談者を孤独感から救うそうだ。
一緒に悩んだり苦しんでくれる存在が、その人に勇気を与え、少しだけ強くしてくれる。

 


そう言われると、そうだったかも…と、思う。
要するに、やっぱりカウンセラーの先生は何もしていない。
先生は、ああしろこうしろと言わないし分析もしない。
泣いていても涙を拭いてくれるわけでもない。
ただ、「根性」でもってあたくしの傍にいてくれただけだ。

それであれば先生の「根性」はピカイチだよ、とあたくしは思った。
また、惚れ直しちゃうな〜♪と、恋多きオバサンは少し浮かれたのだった。

実践入門 解離の心理療法―初回面接からフォローアップまで

実践入門 解離の心理療法―初回面接からフォローアップまで

 

※これ以上わかりやすく出来ないくらい分かりやすい解説。
 医療従事者だけでなく、あたくしのような下々の支援者にも親切な内容です。