心の旅のお作法

妙齢からの、己を知る道、心のお散歩(笑)

たゆたえども、沈まず。

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この数ヶ月間、ずっとこの言葉が頭から離れなかった。
「たゆたえども、沈まず」
ああ、まさに今のあたくしの言葉だなぁ、と思いながら。
 
調べたら、フランス、パリ市の標語だそうだ。
「揺れるだけで、沈みはしない」
 
そうそう、ずっと、揺れているのだ。
でも、あたくしは、なんとか沈まずに暮らせている。
 
あたくしの、“全般性不安障害”の再来を予感させるソワソワをスイッチONした主は、こともあろうに、その後も事有る毎に職場で爆発した。
頻度としては、2週間に1回くらいだと思う。
ちょっと多い(笑)。
 
その人が、あたくしに怒っているのではないのだということは、すでに解っていた。
怒りの対象は、この職場の全ての人…おそらくその人自身をも含んでいるのだ。
少しでも思い通り、予定通りにならないと、恫喝の主はしきりに爆発した。
そうしてその時は、そこにいる誰しもが、傘も持たずに原っぱで雷雨に遭遇した時みたいに、早く遠ざかってくれることを祈りつつ、感情の雨に打たれ続けた。
 
最初のうちは、自分以外の人が怒られると、「この人は、自分の代わりに被害に遭っているのでは?」と思っていた。
よく解らないけど、「ごめんね、ごめんね」と心の中で手を合わせていた。
そうして、その都度、全般性不安障害のスイッチは発動して心臓はドキドキした。
この思考回路に「ありゃ、なんか変だぞ自分?」と違和感を持ち、これこそ自分の個人的なテーマ…治すべき「考え方の癖」であることを自覚したのは、ごく最近だ。
 
 
 
この数ヶ月、あたくしは、「先生! 今こそ先生の出番でしょ?」と言わんばかりに、何回も自分の不安をカウンセリングルームで訴えた。
 
「どうしましょう?
今、あたくしが面倒見ている子には、社会に不安を持ってビクビクしている人がたくさんいるんです。
あたくしは、その子達に、“世の中はそんなに悪いもんじゃない”と伝えたい。
でも、いまのあたくしは本当に怖くて、朝、職場に出かけたくないし、職場にいる間、心臓は常に締め付けられるように痛む!
ある朝、あたくしが布団から出られなくなったら、あたくしが面倒見ている子は、あたしのこのテイタラクに失望するだろうか?」
 
あたくしのこんな御託を、先生はただ、ニコニコと聞いている。
 
だけど、
「最近は、恫喝場面で胸がドキドキしてきたら、“あぁ、あの人は、アドレナリンが全開だぁ”とか“今あの人の交感神経は優位になっている〜”と、考えてやり過ごそうと思ってます!」
と、実践している自己対処法を伝えた時は、緩やかに否定された。
 
「いや、そうじゃない。
 自分が“怖がっている自分”を認められないうちはダメだよ」
 
この2年間、ずっとずっと言われ続けていること…。
中途半端な理屈で誤魔化さず、自分のありのままを認めろというのだ。
あたくしの、「高ストレス下でも冷静でいたい」という煩悩は、先生の前では粉々に粉砕される。
 
「誰だって、怒鳴られたら狼狽えるでしょう? それが普通だよ?」
 
 
 
「あれ以来、自分はとっても怯えています」
ようやく最近、職場の仲間に自分の本当の気持ちを、打ち明けることができた。
こんなこと夜更けの残業時に言われたら困惑するかなぁ?と、思いつつ、思い切ってのカミングアウトだったけど、同僚は「あ、そうだったの?」という顔で聞き流してくれた。
後から、「そんなこと、わざわざ言わなくても良かったかな?」と、チト後悔したのだけれど、弱さをさらけ出したことで、不思議と自分の心がとっても楽になっていることに、後で気がついた。
 
予定だと…いつものパターンだと、自分はそろそろ職場に行けなくなっていたのだ。
ある日、突然布団から出られなくなって…ね?
 
この数ヶ月、影で時々こっそり半錠に割ったアルプラゾラムを口に放り込みながら、同僚や相談を担当する方の前では何でもないように装っていた。
でも、今回のあたくしは、孤独じゃないから、もう、強がらなくてもいいんだ。
心臓は時折バクバクとして、相変わらず痛い。
だけど、何だか今回は大丈夫そう…。
 
やっと、そう思えた。
 
「ほら、僕の言った通りでしょう?」
と、自慢気に言うカウンセラーの先生の顔が目に浮かぶ。