心の旅のお作法

妙齢からの、己を知る道、心のお散歩(笑)

サバイブ。

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あたくしは、極限状態に興味がある。
極限状態に人間の精神はどうなるのか?
自分の興味はそこにある。
 
サバイバルに関するを何冊も読んだ。
 
正月に実家に帰ると、雪の降りしきる夜に必ず読むのが
八甲田山死の彷徨』新田 次郎 著。
 
人に「元気になるよ」と勧められて読んだところ、
あまりの壮絶さに元気になるどころか今もトラウマ的な本、
ヨットレースの事故とその後の長きに渡る漂流を扱ったノンフィクション『たった一人の生還』佐野 三治 著。
 
サバイバルといえば山岳系も読んだ。
ミニヤコンカ奇跡の生還』松田  宏也 著。
トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか』羽田 治 他 著 とか。
 
ホロコーストでの過酷な環境での記録『夜と霧』ヴィクトール・E・フランクル 著 も、もちろん読んだ。
 
生還した当人か、それらの人からの証言を元に書かれた本の数々。
どんな人ならば極限状態で生き残ることができるのか、自分は知りたい。
 
 
 
昨年末に…その年最後のカウンセリングの後に、会社で先輩にしこたま怒られた。
いろんな書類の作成が遅れ、たくさん溜め込んだのだ。
それ自体は、自分が悪いことは十分理解している。
忘れていた訳でもなく、この2ヶ月間、人員不足のまま頑張っていた。
そうして「どこかで遅れを取り戻さなきゃな」と思っていた。
 
残業はかなりMAXな感じでやっていた。
その上でもう少し仕事を進めておく方法も、自分は薄々知っていた。
つまり、他の人がやっているように…
休日にこっそり来て片付ける、とか、
タイムカードを切ってサービス残業する、とか。
あとは、
全てを適当に要領良く手を抜く、とか、
困った人がいても見て見ぬ振りして仕事に没頭する、とか。
 
それは全部、自分の主義的には嫌だったので、
優先順位の高いこと、締め切りがあるもの、自分が行わないことによって他の人に迷惑がかかることから先に行っていたのだけれど、
それでも、限界が来ているようだった。
残念だけど、自分の主義を変えてもっと要領良くしないと、自分はまた体調を崩すように思える。
 
その日、会社の先輩は、仕事の遅れを咎めるだけでなく、あたくしの全人格を否定して怒ってきた。
怒って仕事が早く片付くならいいが、そもそもの仕事量が溢れているのだからしょうがないと思うのだが?
もちろんあたくしは「誠意を持って遅れを取り戻すように努力します」とお伝えした。
でも、あたくしの落ち着いている様子に、相手は更に興奮したようだ。
同僚が「もう、その辺にしておきなよ」と助け船を出してくれたけど、恫喝は止まらなかった。
あたくし的には、その必要性はあまり強く感じられないのだけれど(そして絶対しないけれど)、泣いて謝ったり、土下座すれば良かったのかも知れない(笑)
 
相手は2時間くらいも(!)怒って、「これを上司に言いつけるなら言いつけてくれていい!」と言い放った。
どうやら、パワハラをやっているという自覚はあるらしかった。
恫喝だけで定時を過ぎてしまったので、その後、残業して仕事を進めた。
しかし、その方は次の日も怒りが収まらないらしく、他の新人にまで八つ当たりをする始末。
見かねた同僚が上司に連絡してくれ、すぐに駆けつけてくれたのだった。
それだけでなく、他の人も「これは録音しておいた方が良くないか?」とか、
「証言者になる為にこの場を離れちゃダメだ」と、使命感を感じてくれていたようだ。
ありがたし。
 
あたくしは、ぼんやりと「うちのパーティは冬山で遭難したなら絶望的だな」と思った。
自分はその先輩の信頼を失ったのだろうけれど、あたくしもその先輩への信頼を失った。
双方の信頼が取り戻せるのかどうか、今の所、分からない。
 
 
 
サバイバル本の中で好きな本が一冊ある。
『エンデュアランス号漂流』アルフレッド・ランシング 著
南極点制覇を目指して出航した船は、問題続き。
積荷のラインナップが間違えていたり、乗船名簿に居ない人がコッソリ乗り込んでいたり。
そうして、氷山によって座礁…。
船を捨て、持てるだけの装備を持って、28人の乗組員は、何と17ヶ月も極寒の氷上を彷徨う。
 
早々に冒険は失敗するのだ。
だけれども素晴らしいのは、この探検隊が誰一人の命も失うこともなく生還することだ。
アーネスト・シャクルトン隊長のリーダーシップが素晴らしい。
密航者、凍傷で動けなくなった者、隊の規律を乱して不穏な動きをし兼ねない者…。
そういう人々への対応が素晴らしい。
彼は誰も見捨て無いのだ。
 
人には、どんな過酷な環境でも心の強さや美しさを失わずに生きることが出来る。
自分はそれを知るだけで、なんとなく希望を失わずにいられるような気がする。
 
しかし、自分はやはり、その後、体調を崩した。
恫喝した本人は、心のマグマを出し切ってケロリとしているのだが、こちらはそうはいかない。
数日後に職場にやってきた上司に「大丈夫?」と聞かれた。
 
「多分、毎日見ていたら気付かなかったかもしれないけれど、
 久々に見たら、何というか、元気がないのが分かるんだよ」
と、その人は言った。
 
その言葉にあたくしの胸はいっぱいになる。
あたくしは、なんと単純なんだろう!
精神状態が全部、表面に出ちゃうんだ!
気が付いてくれてありがとう。
あたくしは、正直に「大丈夫ではないです」と答えることができたのだった。

 

エンデュアランス号漂流 (新潮文庫)

エンデュアランス号漂流 (新潮文庫)

 

※残念ながらこの本は古書でしか読むことができないんだな。シャクルトン本人が書いた本は中公文庫から出てます。あたくしは読んでないんだけど。 

 

八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)

八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)

 

※実際の事件(雪中行軍の訓練中の遭難)を元に新田次郎氏が書いたものであり、詳細はちょっと違うらしい。だけど、間抜けな上司が部下をどんな悲惨な状況にするかは良く分かる一冊。

 

夜と霧――ドイツ強制収容所の体験記録

夜と霧――ドイツ強制収容所の体験記録

 

 ※新版もあるんだけれど、自分の読んだのはこっちだから旧版を掲げてみた。フランクルさんは心理学者であったから、このような深い洞察が得られたのだろう。こんな過酷な状態を乗り越えた人に「それでも人生は意味がある、生きなさい」と言われたら「ハイ」というしかない(笑)。

 

トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか (ヤマケイ文庫)

トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか (ヤマケイ文庫)

 

※夏山で凍死者(正確には低体温症による)が出た事件の顛末を書いたノンフィクション。この本に至っては、どうすれば…というより、運のいい人っているよな、という感想。

 

ミニヤコンカ奇跡の生還 (ヤマケイ文庫)

ミニヤコンカ奇跡の生還 (ヤマケイ文庫)

 

※山を攻める時、その場の急こしらえのメンバーで挑むと、やはり命を左右するようないろいろな事が起きるんだなぁ思わされました。信頼関係大事。 

 

以上。書籍はおすすめ順。