心の旅のお作法

妙齢からの、己を知る道、心のお散歩(笑)

ギフト。

f:id:spica-suzuhazu:20181225204049j:plain

先日、初めて「手首を切りました」という人の電話を取った。
 
この仕事を始めた時、あたくしはそうした事態に遭遇することを恐れていた。
だって、それは自分のスキルを越えているし、というか、仕事の範疇を越えている。
 
そんな場面で、自分のささいな言動や判断違いが、大変な事態に繋がったりしないのか?
職場の上司は「そうした医療の範疇の人は、来ないから大丈夫」と言ったのだ。
 
だがしかし、世の中には絶対なんてことはないのだ。
 
そうして、そういう時に限って、事務所にはあたくし一人なのだ。
 
「あのう、お手当はしましたか?」とあたくしは言った。
何しろ、ありえない事態だから、対処法なんか教えてもらってない。
ええい、自己流だ。今まで読んだ本や、見聞きしたことを総動員する。
 
「そうですか、それはいけないですね、すぐ病院に行って下さい。いいですか?」
不思議と頭の中が静まり返っている。
「約束してください。もう二度と自分で自分を傷つけないって。
 世の中の誰かがあなたを傷つけたとしても、自分で自分を絶対に傷つけないって」
そうして、再度、病院に行くことを促した。
 
電話を切ってから、職場の偉い人(「絶対に来ないから大丈夫」って言ってた人にね(笑))に電話。
 
そうして、人と繋がりたい気持ちの表現方法には、なんてたくさんのバリエーションがあるんだろう…と思った。
 
 
 
このお仕事をしていると、日々、たくさんの贈り物をもらうのだ。
 
自分の好きな音楽を共有してくれる人。
自分が書いた絵を見せてくれて、「素敵だね」と言うと、ビリっとノートを破ってプレゼントしてくれる人。
今まで見せなかった笑顔を見せてくれる人。
あたくしが落ち度を謝罪した時、優しい気遣いを見せてくれる人。
 
その人たちは、自分が贈り物をしていることに気付いているだろうか?
誰かの心を温めていることに気付いているだろうか?
自分が、贈り物上手だということに気付いているだろうか?
 
 
 
一方で、贈り物下手な人も存在する。
 
受け取るのを躊躇するような物を、他の人には見咎められないようコッソリとカバンの中から出して、押し付けてくるようなやり方。
 
不器用なんだな。不器用だなあ〜と思う。
 
そうして、そういうことを自分もやってしまうことがある。
 
なぜなら、今回のあたくしは、カウンセリングルームに旅行のお土産を持参しているから…(笑)。
 
「あのう、お困りと思うのだけれど、受け取ってもらいたいのです…」
本当にスミマセン。とあたくしは付け加えた。これはただの自分のエゴだから。
 
物事はタイミングだ。
少し前に、意図せぬ人から贈り物を押し付けられた時の戸惑いを感じて、自分の行動を振り返る羽目になったのだ。
 
 
 
贈り物って、とにもかくにも人との関係性を持ちたい意思表示だと思う。
 
こっそり教えてくれるお気に入りの音楽
うまく描けたノートのイラスト
重い物をヒョイと持ってくれる
ドアを押さえて自分を待っててくれる
自分に向けて見せてくれる親しみの笑顔
 
それから
 
手首を切りましたという電話
死にたいですというメモ
自己判断で薬を飲まずにいたら具合が悪いです、という訴え
不眠が続いているので本調子ではないです、という言い訳
あなたの言い方が気に障って不機嫌になりましたという抗議 ……
 
みんなギフトだ。
関係性を求めてる。
 
ああ、先生どうすればいい?
と、あたくしは師に問うのだ。
 
「ぼくはね、その行為や物に、どんな気持ちが込められているのかを見るようにしているよ?」
 
あたくしは、そこにあまりにも大仰な物が介在すると、反射的に心理的な抵抗が生まれてしまう。
だけど、その心理的な抵抗はこっち側の事情…だから、ひとまず脇に置いておいて、相手の気持ちを受け止めてあげて?  と先生は仰った。
 
「贈り物に対して、どうすればいい?って質問に対しては、あまり的確なアドバイスができないんだな。
 ぼくは、杓子行儀なことを言うのは苦手で、贈ることも貰うこともする人だから」
先生は、あたくしの小さなお土産を受け取ってくれた。
 
先生はそこに、あたくしのどんな気持ちが込められていると読み解くんだろう?
そうして、このあたくしの申し訳ない気持ち、見逃して、勘弁して、という気持ちは何なんだろう?
 
 
 
「来年になったら、カウンセリングは月一にしようか?」
4月になったら、あなた、いろいろ忙しくなるだろうから、と先生は付け加えた。
 
先生と段々と会えなくなるのは、それは覚悟していたことだけど、寂しいことだ。
誰かに席を譲らなきゃいけない時期が近づいていることを自覚しなきゃいけない。
 
来春からあたくしは資格の勉強を始めるのだ。
先生にこのことを相談した時、「出来るよ! やりなよ!」の言葉に背中を押されて頑張ることにしたんだ。
 
寂しいな。
お気に入りのタオルケットを卒業しなきゃいけない時のような、寂しさなんだな。
 
 
 
…嗚呼、先生に「Merry Xmas」伝えるの忘れてしまった。不覚…。