心の旅のお作法

妙齢からの、己を知る道、心のお散歩(笑)

ぼくのやり方で自分を扱って!

f:id:spica-suzuhazu:20180506150535j:plain

自分の中の違和感は、胸痛、息苦しさ、動悸…といった予期不安という形を取る。
以前のあたくしは、これらを自分に何かを訴えるアラームくらいに思っていた。
しかも壊れているアラーム。
何でもないことで鳴り出すアラーム。
止め方の分からないアラーム。
自分はどうやったら、その壊れた部分を直せるのだろうか?と、そのことばかり考えていた。
 
ところが、現在のカウンセラーの先生は「その子の声を聞け」と言う。
その子…そうですか、機械ではなくで、それは生きものでしたか。
あたくしはじっと耳を傾ける。
 
だけれども、恐らくその子とあたくしでは言語体系が違う。
その子が泣いたり喚いたりしながら必死に自分に訴えかけてくるものが何なのか、分からない。
放っておくと、いよいよ勢いを増し、自分の頭をフリーズさせて布団に篭りっきりにさせたりする。
そういう訳でイザという時、ごく最近までは、その子をアルプラゾラムで眠らせてきた。
眠らせれば、その間は楽になる。
その子が起き出したら、また胸の痛みが迫ってくるのだけれど。
 
最近やっと、とことんその子の声を聞いてみようという気になってきた。
机の上やカバンの中、そこかしこに置いてあったアルプラゾラムを集めて、引き出しの中に放り込んだ。
そうして「さあ、聞いてあげるから、言ってごらん?」と、その子に語りかける。
 
けれどもちっとも上手くいかないのだな。
あたくしは焦れてイライラする。もっと分かりやすく表現してくれと思う。
 
 
 
「でも、ハッキリ言わない気持ちも分かるんです。本当のことを言うのが怖いんですよ」
もうこの辺は、あたくしとその子…つまり擬人化されたあたくしの違和感、予期不安の諸症状に関する妄想話だ。
「子どもの頃の、大人から言われる“ホントのこと言ってごらん?”っていうのがあるじゃないですか?
 あれって、本当のこと言っても、結局怒られるじゃないですか?(笑)
 あの展開を予測して、その子は本音を言えないんですよ。」
 
これはもう、かつての自分と親の関係を踏襲していることが薄々分かってる。
嘘をついても本当のことを言っても、親の意図するところを読み損ねたら、結局怒られる。
真実を語るよりも、どのように取り繕えば事態が丸く収まるのか、そればかり考えていた。
 
「あまりにも警戒心が強くて黙っているから、終いには誘導尋問するんですよ。こうなんじゃなーい?って…」
それが、幼少期のあたくしへの親の接し方だったし、自分の違和感に対するあたくしの態度でもある。
 
「ちょっと、ちょっと!」それまで黙って聞いていた先生が声を上げる。
「誘導尋問なんて止めてくれる?」
言葉は穏やかだけど明らかに咎めてる。
「ぼくは、一度だってあなたにそんなことしたことある?
 ないでしょ?」
それはちょっぴり怒気を孕んでて、緊張感がある。
 
そうして、
「ぼくがいつもあなたにしているみたいに、あなたも自分のことを扱ってくれない?」
と、先生は言った。
 
いきなり皆様に問いかけちゃうけど、その時のあたくしの不思議な気持ちを想像できます?
あたくしは、ビックリしたよ。そうして後で考えれば考えるほど、ますます不思議な気がするよ。
 
自分の心が、もう自分一人のものではないような、奇妙な感覚。
 
あたくしが持て余し邪険にしている自分の違和感を、先生はもっと丁重に扱ってあげてと言う。
いつも先生があたくしにしてくれるやり方で、あたくしも自分の違和感に対して接してあげてと言うのだ。
 
「ちゃんと自分の心を抱えてあげたら、些細なことで動揺したり怒りを感じたりしなくなるから」
ああ、難しい。だって、何を言ってるか分からないのですよ?
「そのうち、絶対分かるから、大丈夫」
先生は自信たっぷりに言うけれど、そんな日が果たして本当に来るのだろうか?
 
 
 
「ねぇ、今、胸の痛みはどうですか?」と先生が問いかける。
「全然…痛くないです」
「ほら、今はちゃんと自分の気持ちを抱えられてるからだよ」
そうだろうか? それは違うと思う。
 
ギャンギャン泣く赤ちゃんを抱えてオロオロしてたら、隣から先生がヒョイと取り上げ、たちまち寝かしつけてしまった…感じなんじゃないかと。
 
「今は、先生がいるからですよ?」
先生は、それを否定せずにどことなく満足げだ。
「ん、それもあるとは思うけどね」
 
「それに、あの痛みは“一人の時にしか出ない幽霊”みたいなものなんですよ」
そんな風にあたくしが言うと、先生は顔をしかめた。
「何だか知らないけど、今日はよく“幽霊”の話を聞く日だなぁ…」
そういう日ってあるものですよね?
「怖いから、その“幽霊”の話はやめてくれない?」と先生は言った
 
 
 
※自分は予期不安時の頓服…アルプラゾラムを「我慢して」痛みと向き合うって宣言したけど、先生は「痛いの、我慢しないで」と言った。あたくしには、辛いことを我慢する→その我慢がどこかで報われる、っていう思考回路があるんだろうな。そんなこと必要ないよ、なるべく楽に行きなさい、と先生は言うのだ。