心の旅のお作法

妙齢からの、己を知る道、心のお散歩(笑)

頭のネジが取れたようだ。

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セーターを後ろ前で外出し、一日中、あるいは親切な人が指摘してくれるまで全く気付かない…とか、そういうところがあたくしには昔からある。
久々にやってしまった。
気がついたのは、地元の駅に着いて肌寒さからカーディガンの前ボタンを閉じようとした時…。
「これ…裏返しに…着てる…!」
 
ものすごく危機感があるのは、特に忙しくもなく、慌ててもいないのに、ごくナチュラルな感じで立て続けにウッカリなミスを連発している、その頻度の高さだ。
 
先日、知人の個展に出かけたら、ギャラリーは閉まっているのである。
ポカンとしていたら、隣のテナントの人がスケジュールを教えてくれた。
「一週間、早く来ちゃったんだ!」
その上、忘れていたと思っていた、案内のハガキも鞄の底から発見された。
 
その他にも、とある書類の発行を郵便で申請したら、何種類か必要な本人確認の書類を(準備していたにも関わらず)同封するのをガッツリ忘れていた、というのもある。
 
 
 
しかし、その程度なら自分の中ではギリギリ許容範囲だったかもしれない。
心底「まいったな」と思ったのは、先日、友人の紹介で面接を受けた時のこと。
今度は短期のアルバイトではないので面接官は真剣だ。
「さあ、あなたの職歴を最初から直近のまでお話しください」と来た。
各職場でどんな仕事をし、そうしてどのような理由で辞めるに至ったのか…?
そういうことが人事担当者は聞きたいのだな。
 
実は、自分、事件以来10年間は2年以上続いた仕事がない。
まさか「身体中に蕁麻疹が出まくって辞めました」とか「朝起きたら身体が布団から出られなくなって辞めました」なんて言える訳もなく、そもそも事件に遭ってから少々おかしくなったなんて言ったら、即、ゲームオーバーだ。
その辺りは今までは全て嘘で塗り固めてきたのだ。
 
だから、もちろん最初のうちは緊張していた。
しかしその日、次第に自分はいつになくリラックスしてしまい、辞めるに当たっての自分の正当性を主張していたのだった…。
それは間違いなくお門違いな場面だったのだけど、ごく自然に、客観的に“前職を辞めるに至った経緯”を語る自分に、あたくしは驚いた。
 
「部署内の人がメンタルダウンしそうなのに気がついて、上司にそれとなく訴えたり、その人の悩み事を聞いていたのだけれど、その人は結局辞めてしまった。
 一番新人のあたくしが何故か後を継ぐことになり、本来の仕事も回らなくなった。
 欠員補充もなく、その状態が改善される様子もなかったので辞めました」
 
いや〜これ言ったら、あはは、ダメだよね。
どんな境遇でも頑張ります!って風を醸し出さないとアウトなの。
 
いつもなら、止むに止まれぬ感を出したりして、もっと上手く説明してきたの。
その辞めた会社だって「今度こそ頑張るぞ〜!」とか思って入った会社だったのよ。
だけど、年下の上司は社長の恫喝を食らい続けて毎日涙目だし、それをフォローするだけでも毎日辛かったの、本当は。
 
自分の深層心理が「もし御社がそんな感じだったら、あたくしきっとすぐに辞めますわよ?」って言いたいんだろうな(笑)。
これまで、割と巧妙につけていた嘘が、何故かつけなくなったのだ。
これは、困った。
 
 
 
「そういう訳で、肝心な時に自分はフニャフニャで役に立たなくなったのです」
と、あたくしはカウンセラーの先生に訴えた。
「少しはシャキッとできないと、職にありつけない…」
 
先生は「就職活動、上手くいくといいねぇ〜」と前置きしてから、こう続けた。
「世界の方が狂ってるんだから、無理に合わせなくてもいいんだよ?」
その言葉は嬉しい、嬉しいのだけれど、現実に則してない。
狂ってるとしても、少しは世の中に合わせられないと、自分はいつまで経っても無職だ。
 
そんなあたくしの呪いを解くように、先生は言う。
「きっとどこかに、あなたに合う職場があるさぁ〜♪」
 
カウンセリングを受けているうちに、あたくしの頭からネジが一つ取れたみたい。
取れたなら、拾って付け直せばいいのだけれど、そのネジは、取れた弾みで転がって、側溝に落ちてしまったらしい。
これは困った。
しかも、落ちたらしいことは分かるけど、それがどんなネジかは分からないのだ。
 
「他の人が気付かないことに目配れるってことはさ、そういう仕事に向いてるってことじゃないの〜?」と先生がフォローしてくれる。
そうかもね。
だから自分はカウンセリングの勉強までしたに違いない。
だけど、それほど辛かったんだ。
みんなが見ないで済んでいるところが見えてしまうことが、そうして気付いてしまったら何もせずにいられないことが、辛かったのだ。
 
カーディガン裏返しでも、面接に落ちても、いままでのように過剰に自分にガックリきたり、怒りが湧いてこないのも、不思議なのだった。