心の旅のお作法

妙齢からの、己を知る道、心のお散歩(笑)

あなたの父親は完璧なのよ?

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母と電話していたら、流れであたくしのカウンセリングの話になった。
あたくしがそこで何をしているのか、カウンセラーの先生に何をされているのか、母は興味があるようだ。
 
それに、あたくしがカウンセラーのお世話になることに、母は負い目を感じてる。
あたくしのカウンセリング通いは、
 「あなたがやり損なったことがあるから、娘は病んでカウンセリングを受けてます」
 と、暗に母を責めているのだろう。
 
確かにかつては責めてるニュアンスがあったけれど(笑)、今は正直、そんな気持ちはない。
たくさんのことがすでに解決したし、残っているものも解決しつつある。
今の先生のカウンセリングを受けてから、自分はだいぶ色々なことが分かってきた。
 
「それでも続けるのは、もっと自分を知りたいからだよ?」
「要するに、面白いからやってるんだよ」とあたくしが説明すると、
「そこまでして、どうして自分のことを知らなければいけないのか?」と母は言う。
 
そこまでというのは、お金と時間とあたくしの苦悩、全てに関してだと思う。
「もっと好きなことをして気晴らしした方が良くないかい?」
「お小遣いが足りないなら、言ってね?」 
そんなお金持ちの人みたいなことを母は言う。
 
 
 
うっかり「カウンセリングではカウンセラーはパパ役をするんだよ」と言ってしまったら、母は軽くショックを受けたみたいだ。
「ほら、自分のカウンセラーは男性だから、パパ役になるんだよ」と慌てて付け足しても母は納得しない。
それは、母だけでなく父もまた不足があったから、と言っているようなものなのだろう。
「いやそういう訳でなく…」
どんな柔らかい言い方をしたら通じるだろうと思いながら、
「ほら、お父さんはさ、すごく忙しくて育児にあまり参加できなかったじゃない?」
と言ってみた。
昭和の父は、みんな普通にそんな感じだから。
 
「あんた分かってない、そんなことないよ!」
間髪入れず、母は大きな声を上げた。
「お父さんはね、毎晩仕事から帰ってくるとまず一番最初におまえの側に行って、頭からつま先まで、どこか怪我をしていないか調べてたよ?」
その話を聞くのは初めてではなかったんだけど、なんだか今日の印象は違ってた。
「おまえを宝物のように扱って、ちょっとでも怪我をしていたら、あたしはもの凄い剣幕で怒られたんだから!」
 
だから、父親は全然育児に参加してなかった訳じゃない。
子どもをとても愛していたし、実際に大切にしていた。
育児に参加する理想的な父親だったんだよ、と母は力説する。
それなのにあんたは、何だってカウンセラーのパパ役が必要になるのよ? と。
 
真実を捻じ曲げて何事もなかったかのように解釈する母に、いつもイライラしていた。
何もないのに不満を訴えるおまえの感覚がおかしい、ひねくれている、と何度も言われた。
 
だけど今日は、一生懸命に父をかばう母に、初めて「あぁ、大変だったんだね、お母さん」という気持ちがジワァ〜と湧いてきた。
 
 
 
人は、生まれてからおおよそ3歳くらいまで記憶の空白期間がある。
実はこれが愛着形成にとってとても大切な時間らしい。
その間に作られた癖みたいなものは、3歳以降の記憶や思考によって解釈されることになるのだけれど、それは時に相当お門違いだったりするらしい。
…と、最近、本で読んだ。
 
自分が一生懸命に謎解きしようとしても、カウンセラーの先生から「無駄!」「ハズレ!」と言われるのはそういうワケだ。
 
赤ちゃんの頃のあたしは恐らく、自分のせいで母が父から怒られている場面を、見ている。
ビックリして動きが止まっているかもしれない。
怖くて泣いているかもしれない。
 
当然覚えていないけれど、赤ちゃんだった自分は何かを見て学習したはずだ。
どうしたら、この空間が平和になるか、一生懸命に考えたかもしれない。
 
自分の中の安全基地がどのように不完全なのか、あたくしには知る由もない。
そうして、その修復にはカウンセラー扮する偽パパのサポートが必要だなんて、親に理解できるワケがない。
カウンセリングルームで自分の魂が、赤ちゃんから現在までの様々な時間を行ったり来たり、壮大な旅をしているのなんて、到底伝えきれないのだ。
 
 
 
電話の向こうから母の声が聞こえてくる。
「お母さん、子どもの頃のおまえに、いろいろ頼っちゃっていたの、ごめんね」
「うんうん、分かってる、大変だったの分かってるから」
咄嗟にそうは言ったけれど、それは実は意外な言葉だった。
 
本当は自分、全然分かってないのかもしれない。
だけれどもきっと、あたくしはずうっと、そんな言葉を待っていたのだ。
だからもう、余計なことを言う必要はない。
 
先生にいつも「その感情を、よく味わいなさい」と言われているのに、あたくしはあっという間に感情の渦に飲まれてしまった。
ダメだな、自分、修行が足らぬ。