心の旅のお作法

妙齢からの、己を知る道、心のお散歩(笑)

共感されなくても平常心。

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※今回、真面目な話ではありますが妙齢の下ネタですので、各自判断におまかせします。
 
「そういえば、この間の話した君の悩み、やっぱり俺としては共感できない訳よ」
居酒屋で熱燗を酌み交わしながら、男友達がこう言った。
 
蒸し返すけど、共感はできないと釘を刺しているのだ。
よろしい、聞きましょう、言い給え。
 
2ヶ月も前に何かの拍子に彼に告白したあたくしの悩みは、「夫とのセックスがない」なのだ。
 
最近ないとか、歳を重ねる度に頻度が…というのではなく、新婚当初より、ほとんど「ない」のである。
若かりし頃のあたくしは、男というものは皆、少なからず種族繁栄本能があるのだとタカをくくっていた。
あたくし自身は家族が欲しかったのだ。そうして、できれば母になりたかった。自分が欲しかったものを、愛する人に与える人になりたかった。
それは夫となる人の人格を、ある部分では無視しているんだと今では分かる。だがしかし、なんと代償は大きかったのだろう。
 
とにかく、そうした暮らしに5年くらいで参ってしまい、離婚。その後、一人暮らしの時に現在のトラウマ治療につながる事件に遭うことになる。
離婚から5年経ち、久々に会った夫の「やり直したい」という言葉を真に受けてしまっても致し方ないとは思うのだけど。
 
何が原因で失敗したのかは分かっているから、今度こそ…と思うだろう。
 
しかし結論から言うと大失敗だった。
再婚後も夫は何も変わらなかったのだ。
というか、人間の性(さが)など、そんなに簡単に変えられるものではなかったのだ。
あたくしはもっと聡明であるべきだった。
 
「俺の周りには、もっと大変な旦那を持ってる人がいるわけよ。
 働かない奴とか、暴力振るう奴とか、ギャンブル狂い、借金、浮気三昧な奴とかね」
それに比べたら、ちょっと見は優しそうで、一緒に旅行とかも行っているみたいだし、全然悩みの内に入らない、と言いたいのだ。
 
違うんだな、あたくしが「夫です」と紹介した人は、実はルームメートな訳なんですよ。
 
ちなみに、ルームメイトとしての夫は完璧で、風邪を引いたら温かいうどんを作ってくれ、ポカリスエット、風邪薬、栄養ドリング、ゼリーなんかをササッと買ってきてくれる。普段から家事もテキパキとこなすから、家政婦欲しさに結婚したわけでもなさそう。
 
夫には、何度、本当のことを言ってくれと迫ったか分からない。
なぜセックスだけを巧妙に避けるのかが知りたい。
今や、その理由が分かるなら、実はゲイであるとか、そういうので全然構わないのだ。
彼は、時には涙を流して、ただただ「ゴメンね」と言うのみだった。
大の男を泣かしてしまった時の罪悪感は半端ない。
そんなに酷い人か、あたくしは? 鬼なのか?
ああいう風に泣く男は大嫌いである。泣く男こそ、ズルい。
あたくしを鬼のように醜い形相にし、怒らせたままにしている彼が憎い。
そんでもって、この二人の関係は一体何なのか?
長く暮らしていても本当の事は聞けないのだから、親友ですらない。
(ちなみに本人曰く、ゲイではないそうです)
 
 
 
「それでも、なんだかあなたは、その友人にはそんなに腹を立ててないみたいだね?」
と、カウンセラーの先生が言った。
 
「そうですね。以前なら、共感されないとムッとしたり、時には怒ったりしたと思うんですけど、今回は分からなくて当然かな? みたいに思えたんですよね。
 それに共感されたらされたで、この人は自分を助けてくれるかもしない…って過度に期待しちゃうところがあったんですけど、そんな気持ちもなくなったような気がします。
 ようやく、そういうのは違うなぁって気がしてきました」
 
たとえ、相手の反応が必ずしも共感的でなかったり好奇心や興味本位だったとしても過度にガッカリしない、そして共感が得られても過度に期待しない。
こう思えるのはあたくしにとってはちょっとした進歩なのだ。いささか優等生チックな応答のような気がするけれど…。
 
あたくしだって全ての人の悩みを手放しで共感できるわけではないのだから、お互い様だ。
もちろん、カウンセラーの卵としてなら、共感しようと努力はできるけれどもね。
 
共感が困難なケースを克服するのは、カウンセラーの永遠の課題とされている。
クライアントの境遇より、カウンセラー自身の境遇の方が過酷に思えたら、一体、どこまで心から共感できるだろう?
「アタシよりずっとマシじゃないの?」とカウンセラーが思ってしまったら、その時間は台無しになってしまう。
これは、己を知り相手を知る努力を重ねることでしか克服できない課題なのだろう。
 
そもそも双方の重さを比べられないことだってある。
例えばだけど、生涯独身の寂しさと、長年連れ添う配偶者と心が通い合わない寂しさは、どっちがどう、とは言えないだろう。
 
「それにその友人には悪気はないんだって伝わってきたというか、ある意味誠実さが感じられたかな?」
と、あたくしは言い添えた。
彼の言い方はあまり上等だとは思わないけど、慰めようとか励まそうというニュアンスが感じられた。
それに、わざわざ共感できない、なんて言うの勇気いるじゃないですか?
あたくしは離婚に際して双方の親に説明しに言ったけど、「そんなことで離婚するなんて!」と全く共感されなかったよ。身内、兄弟、親しい友人だってそんなもんでしたからね(笑)。
 
「それにその友人は他人のことばかり心配しているような言い方をするんですけど、バツイチで独身なんです。もっと彼が自分の幸せのことを考えればいいのにって思いましたよ」
何とも余裕のある、自分らしからぬ発想じゃあござんせんか?
 
 
 
ところで、男性にセックスレスの話題を振ると、必ずされる問い掛けが二つある。
質問1)女性の性欲はどのように処理しているか?
質問2)もしよかったら俺が相手になるけど?
 
この発想は、女性ではまず出ない。男性独特のものなんだよね(笑)。
女性なら性欲の処理方法は聞かないし、対異性でも「アタシとする?」とは言わないだろう。
「打ち込める趣味を見つけなよ」「ペットでも買えば?」ぐらいが模範解答かと。
 
その日、その友人もその2つの質問をしてきたのだ。
この質問のために話を蒸し返してきたのかもしれぬ(笑)。
 
そういうわけで、この手の質問は一笑に付すのが大人の女性の対応なのだが、質問1)については、「インターネットで無料お試しのレディースコミックを読んでみたり」と適当を言ってみたら、彼はとっておきの秘密を聞いたように目をキラキラさせたのだった(笑)。
 
まさか、カウンセラーに胸キュンしてるので、その辺は超えている、なんて本当のこと言ったらブッ飛ぶだろうからさ、酒の席だし適当で許されるでしょう。