心の旅のお作法

妙齢からの、己を知る道、心のお散歩(笑)

カウンセラーに観てもらいたい映画。

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大きなお世話かもしれないけれど、カウンセラーの肩書きでお仕事する人に観ておいてもらいたい映画が2本ある。
『普通の人々』と『グッド・ウィル・ハンティング』。どちらも単純に映画として上質で面白く、しかもカウンセリングをテーマとしている。
 
もちろん映画に出てくるカウンセラーはファンタジーで、実際に現実のカウンセリングを体験すると「違うわ」(笑)と気付くのだけれども。大抵の人は実際のカウンセリングを受けるまで、カウンセリングがどのようなものかモヤっとしか知らない。
結構こうした映画を通じて、「カウンセリングってこんなもの」と擬似体験され、カウンセラーに対するステレオタイプが醸成されていたりするからね。何を隠そう、あたくしがそうだったし!
 
刑事ドラマの刑事と実際の刑事は違うのは、多くの人はご存知だろう。でも、素晴らしい教師や医師が出てくる映画を観てしまうと、実際にはそんな立派な方はそうはいないのに、なんとなくチョット期待してしまう…みたいな感じだろうか。
 
そんな訳で、映画などから理想のカウンセラー像を作り、勝手に誤解したり期待を膨らませている人が少なからずいる、ということをカウンセリングという職業の性質上、知っていてもらいたいかも、と思うから。もちろん「それだけ期待されている」ということを踏まえて。

カウンセリング映画にありがちなストーリー展開

二つの映画の共通点があって、それは
1.最初は気乗りしない、やや反抗的なクライエントが 
2.時には激しくカウンセラーと口論しながら信頼関係を築き 
3.心の深い部分の問題を解決する 
というストーリー展開である。
 
あたくしは本当にアホな子で、これらの映画(いずれも米国映画)の展開から「こういうのがカウンセリング」とインプットしてしまった! だから、実際にカウンセリングを受けて、そのギャップに相当驚いた。例えばあたくしは…
 
1.カウンセラーがクライアントの心の矛盾点を鋭く指摘してくる。
2.カウンセラーがクライアントを多少怒らせても本心を引き出そうとする。
3.最後はハグしたくなるほど信頼関係が高まる。
 
…みたいなことを期待しているのに、カウンセラーはあたくしの会話のどこにも引っかかってくれない(笑)とか
そうして話だけがサラサラと流れていき、毎回のセッションで心が動かされるような働きかけが何も起こらないので、カウンセラーへの信頼感も高まらない。あたくしの話は他人にとっては聞く価値のない話なのだろうか? と悩んだりした。
 
自分が少しでもカウンセリングを勉強すると、クライアントの矛盾点を指摘したり怒らせてまでして「眠っている感情を呼び覚ます」なんて「とっても高等テクニック!」で、大抵のカウンセラーはそんなこと滅多にしないと理解できる。まずは基本的な傾聴テクニックで信頼関係を築くのが精一杯なのが現実なのだけど、そんなことは素人には分からないのだった。
それに、ハグなんかありえない!(基本的には、恋愛チックな陽性転移なども考慮し、身体接触は控えるというかNGらしい)

カウンセラーにはまず『普通の人々』をおススメしたい!

まあ、そんなことを踏まえて、『普通の人々』と『グッド・ウィル・ハンティング』、あえてどちらか1本というなら、カウンセリングに携わる人にはまず『普通の人々』を観てもらいたい、是非。
 
1980年の映画なので画面の古さは否めないけれど、現代の日本の比較的経済的余裕のある家庭に置き換えても全く陳腐化しない普遍性がある。
主人公は一見平凡で暗くて適度に優等生。自殺未遂や近親者の死、子供が精神的な問題を抱えた時の両親の戸惑いなどに加えて、どうしても子供を平等に扱えない親とか、親の愛情を感じられずに自暴自棄になる子供とか、そんなどの時代にもあるだろう家族間の葛藤が描かれている。
 
この映画を最初に観た時は、もちろん後年、自分がクライアントになることなど全く思いもよらなかった。ただ大好きな俳優ロバート・レッドフォードの初監督作品ということだけで観たのだった。縁とは不思議なもので、以後、人生の節目に何度かこの映画を観ている。観るたびに感想が変わり、自分の心境の変化も省みることができる、あたくしにとってスルメ的映画になっている。
 
ちなみに『グッド・ウィル・ハンティング』の主人公は無学ながらも飛び抜けた数学のセンスを持つ天才青年で、カウンセリングによって心理的な葛藤が解決されると、将来に対しても恋にも前向きな人になり、映画は超ハッピーエンド。『普通の人々』のある意味モヤっとするラストに比べて、こっちはちょっとファンタジー入っている。
でも爽やかな涙を流すのには最適な映画だし、マット・デイモンベン・アフレックなど俳優陣がいい。特にカウンセラー役の故ロビン・ウィリアムスがいい味出してる。
この映画はカウンセリングを扱った映画としては、一般的には一番知られていると思う(1997年の映画なので、『普通の人々』よりも時代的違和感も少ない)。

映画にでてくるようなカウンセラーは滅多にいないけど…

最後に、映画に出てくるようなカウンセラーなんて現実にいない!と一時は勝手にショックを受け、憤慨、失望した自分なのだけど…実は現在お世話になっているカウンセラーの先生が今の所、理想のカウンセラーにとても近い。映画に出てくるようなカウンセラーは滅多にいないけど、やっぱり探すと現実にも「まれに」存在したりするのだ(笑)。
 
その先生は、あたくしをわざと怒らせるようなことはもちろん言わないけど、自分の心の複雑さや数々の矛盾を自覚させてくれるような「とてもスリリングな会話」を展開させてくれる。カウンセリングという場を忘れて、あたかも友人に対するような親近感を感じたりさえする。
 
いつかカウンセリング終了の日が来ても、ハグの一つもなくその先生と別れるのは今から残念なのだけど、非常に信頼し、尊敬しております。ハイ。
 
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