心の旅のお作法

妙齢からの、己を知る道、心のお散歩(笑)

「敏感すぎる人」がいる。

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「敏感すぎる人」のことをHSP(Highly Sensitive Person)と呼ぶらしい。
 
あたくしには、全般性不安神経症という病名がついているので、現在のパニック症状や鬱状態 神経質や心配性は、病気から来るものだと認識している。
それでも、何か参考になるんじゃないかと思い『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。』エレイン・N・アーロン著 を読んでみた。
 
本によれば、だいたい全体の15〜20%は「敏感すぎる人」だというのだから、本当なら結構存在するということだ。
たまに「自分は敏感です」と自ら主張する人がいるけれど、HSPは敏感すぎることをひたすら恥じ、生き辛さを抱えて生きているらしい。あたくしも、リアルな対人関係では、病気が理由だとしても「敏感すぎる人」だとはなかなか言い難いのでよく分かる。
 
とはいえ、この本の趣旨は「欠点を克服しよう」ではなく、大人なら、自分が自分を理解し、ケアし、育てられる人になりましょう、というスタンス。
そもそもHSPは、単純に普通の人よりも感受性の感度が良いだけで、「短所ではない」し「時には長所になりうる」と説くところが、この本の清々しいところかな。
 
「こんな人がHSP」といった定義や、「こんな育てられ方をしたHSPが生き辛さを感じる」みたいな発達心理学的アプローチもあるけれど、HSPを欠点とは捉えてないので、この手の本にありがちな「そうか、やっぱり育てられ方が悪かったんだ」「で、どうすればいいの?」という絶望的な読後感に包まれることはありません(笑)。
 

HSPの生き辛さの緩和にはセラピーがよいらしい

HSPに関する詳細はさておき、あたくしが興味を持ったのは、著者が有効な対処法として「セラピーを受けるべき」と勧めている部分。

著者自身がHSPの心理学者なので、セラピーを受ける側の立場から書いているところがよい。

どんな心理療法やセラピストを選んだらいいのか、セラピストにはどんな態度で臨んだらよいのかまで書いてある。「セラピストに好かれようとしてはいけない」とアドバイスし、転移現象が起こる可能性と、その「良い面」(治療を効果的にする)と「悪い面」(依存が生じる)双方について触れている。
 
日本には、敏感すぎるからといってカウンセリングまで受けようとする人は少ないのかもしれない。けれど、あたくしのように、これを病気と捉えてカウンセリング受け、失敗した経験があると、こうした著者の言葉はとてもありがたく感じる。
 
カウンセラーがクライアントをどのように扱うべきかの本はものすごくたくさんあるのに、クライアントがどのようにカウンセラーとお付き合いするべきかについて触れている本って、あたくしは見たことがない。
日本にだって、メンタル的な悩みから自身もカウンセリングを受けたことのある心理学者や臨床心理士はいるだろうに…頼むよ、日本のカウンセリング界!
 

HSP認知行動療法は根本的解決にならないらしい

セラピーと併せて、その周辺で、比較検討対象になるであろうアプローチに関しても書かれている。

認知行動療法に関しては、
“この療法にはそれほど「深み」も魅力もないが、かなり効果的なので試してみる価値があると思う”
“認知行動的アプローチはとても理性的なアプローチだが、「敏感な人というのは、ただ愚かしくて不合理なことを言っているだけだ」と秘かに思っている非HSPが開発した方法でもある”
などと、けなしているんだか勧めているんだか分からない書き方をしていて、笑えます。
自分自身が数々の認知行動療法のワークブックにイマイチ乗れなかった理由も、左脳的によく理解できました!
 

HSPにはスピリチュアルよりセラピーがよいでしょう

ご丁寧にスピリチュアル的アプローチに対しても触れている。心理学とスピリチュアルのゆるやかな繋がりをサラリと語るあたりは、アメリカの学者が書いた本らしいなあと感じました。

日本の学者が書いた心理学本ではまずこうした部分が触れられることはないから。日本のカウンセラーはおりこうさんなのか、まずスピリチュアルな話題には触れないし、そもそもそうしたトピックをあまり知らない人もいる。
 
でも本来はカウンセリングを受けた方がよい人が、スピリチュアルヒーリングに流れている現状は無視できない。自分が望まなくても人の弱みに付け込んで向こうからやってくるかもしれない。全くの主観だけど、カウンセラーの商売上のライバルは、カルトを含む数々のスピリチュアルなヒーリングだと思っている(料金もだいたい同じ)。そうしたライバルに関して、日本のカウンセラーはもう少し知っておいてもらいたい気がする。
 
なんとなく怪しいからダメ…なのではなく、著者のように「指導者に強い転移を起してしまっても、指導者はその転移から救い出し成長をさせるスキルを持ってない、転移を助長しようとする指導者さえいる」みたいに言ってくれると分かりやすい。転移の可能性を考えると(HSPは転移に陥りやすいそうだ)、たしかにカウンセラーの方がおおむねマシだろう。
 

敏感すぎるのを能力と考えると少し楽

あたくしは、元来はズボラで大雑把だったのに、病気で敏感体質になったクチなので、早く治そう、元どおりにしよう、と思い続けてきたのだけど、10年患ってしまうと、正直、身に馴染んでしまった部分もある。だからこの本を読んで、敏感力という「新しい能力が備わった」という考えもありなのかな? と、長年の「一生このままでは?」といった不安が若干和らいだのとともに、新しい視点が持つことができたのは良かった点。
 
しかし、恫喝でフリーズする性質は直したい。もしこれが克服できた暁には、敏感体質の方はどうなっちゃうのだろう? 消えるのか? そのままなのか? 自分としてはどうありたいのよ? …といろいろ考えさせていただきました。
 
図書館で借りた本なので、急いでこれから、返しに行きます!
 
ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。 (SB文庫)

ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。 (SB文庫)

 
※この本、ハードカバーの時はカワイイ装丁だったのに、文庫本になったとたん安っぽいハウツー本のようなカバーになってしまってガッカリ!なのだった