カウンセリングで陽性転移を体験したよ。
カウンセリングの場でよく起こる陽性転移とは…
陽性転移とは、カウンセラーとクライエントの関係において、クライエントがかつて親などに向けていた感情を、カウンセラー(あるいは医師)との関係において再現するもののうち、プラスの感情を伴うものです。マイナスの感情を伴うのが陰性転移。逆にカウンセラー側に同様の現象が起こるのを逆転移といいます。
あたくしは3人目のカウンセラーとの関係において初めて体験したのですが、巷ではよく起こり得ることらしく、ネット検索すると「カウンセラーを好きになっちゃいました」といった事例はたくさん出てきます。
それなのに、あたくしも心理学の本やネット検索で「こういうことはある」と分かっていたのに陥ってしまったのです。あたくしには起こらないだろうと高をくくっていたのもあります。とにかく、左脳では分かっているのに、右脳はまんまと陥ってしまった!のです。
自分の場合は、以前のブログで「男性のカウンセラーの方がいい」と言ってるくらいなので、素人の浅はかな分析ですが…おそらく父親に対する何らかの感情が深層心理にあるのでしょう。それがたまたま、今回お世話になっているカウンセラーとの関係で展開しちゃったらしい。
どんな風に陽性転移は起こったのか
過去お世話になった2人のカウンセラーの際は、どちらかというと、「ストレス耐性をつける」とか「恫喝場面でもパニックにならない」といった予防、「緊張してきたときのリラックス法」といった対処を目的としてセッションを受けてきました(…次第に世間話になってしまいましたが)。今回は、もっとトラウマの治療に焦点を当てて、根本治療をしようと考えたこともあり、そういった類を専門としている方を探した訳です。
そうして探したカウンセラーの方に初回で好感を持った経緯は「3人目のカウンセラーにトラウマ治療をゆだねる。」に書いた通りですが、その時の気持ちは「本当にプロフェッショナルだなあ」といったリスペクトに近いものでした。
ところがですね。
3回目の面接を終えて自宅に帰ってから、何だか自分の感情がおかしくなっているのに気がつきました。
先生の顔が思い浮かぶのです。それは、目だったり口もとだったり、部分的なので、「先生の顔の全体はどうだったかなぁ」と考えるのです。
ここでは治療の詳細は省きますが、セッションの流れの中で、先生の顔を見て行う部分があるのですが、実は、その、人の顔を見ながら…というのがあたくしは苦手らしい。自分に自信がないので、伏し目がちになってしまう。自分の想いを正直に話すことに慣れていないので、恥ずかしくて顔を上げられないのだ。ゆえに、実は先生の顔の映像の記憶は断片的になってしまっている…。
どうやら、カウンセラーとのそうしたやり取りを家で反芻(はんすう)しているらしい。
あたくしの陽性転移のリアルな感情は
そもそも、カウンセラーに対して恥ずかしいという気持ちが新鮮でした。これ自体が、カウンセラーから良く思われたい、という気持ちのあらわれですよね?
もちろん、それ以前のカウンセラーの前でも、自分の心の中の核心部分を包み隠さず話そうとする時は、もちろん恥ずかしさを感じる場面もあるのですが、どちらかというと「自分の悲惨な体験を話した時の相手の反応を見てやろう」という部分が占めていました。相手のカウンセラーとしての能力を値踏みするような感じでしょうか(カウンセラーが真剣に話を聞いてくれなさそう…と感じたクライエントは、自分の話を「盛る」傾向にあるらしいですよ。これ、また別の機会に書きたいテーマです)。要するに、まだ、自分や他人をコントロールしてやろうとかなんとか考えていたわけです。
ですが、どうやら1回目の面接で、素直に「先生、すごいや」とリスペクトの感情を持てたことから、ものすごくスムーズに信頼感情を抱いたらしい。もちろん、当時は全く分からず、今、振り返って思うことですけど。
でも、その時は何でこんなに先生の顔を思い浮かべたくなるのかなっ? と、「???」なんですよ。
そして、同時にものすごい安堵感がやってくるのです。
安堵感を得る場面って、皆さんならどんな場面を想像しますか?
“忙しい合間にやっと美味しいコーヒーにありつけた時…”
“ギリギリセーフで目的の乗り物(電車や飛行機)に滑り込めた時…”
“急ブレーキが間に合って、事故にならずに済んだ時…”
あの「ホッ」としか感覚を想像するのではないでしょうか?
しかし、自分の感じた安堵感は、もっと強度があったというか、泣けました。
“自分が小さな子どもで、人混みの中で迷子になってしまい、泣かないように必死でこらえながら親を探し、親を見つけた時に号泣…”
…あえて言うなら、そんな時の激しい感情がピッタリくる感じ。
久しく忘れていましたが、安堵感はマックスになると、泣けるのです。
“遊園地の帰りに疲れてしまって、親におぶってもらって、それでもなお愚図って、怒ったり泣いたりして甘えている時の感じ”にも似ています。
自分の中から幸福感が溢れ出して、身体全体が包まれている感覚です。う〜ん、上手く表現できなくて申し訳ない。
要するに、そういう、ここ何十年も体験していないような無条件な愛に包まれる感覚を(バーチャルだけど)体感したのです。
だいたいこれが、3日間くらい続きました。その間、胸がキュンキュンしっぱなしです。
そうして、変な話ですが、この安堵感をものすごくシンプルに説明しようとすると、なぜか「先生が好きかも」(笑)になっちゃうんです。
陽性転移をカウンセラーに告白するべきか?
カウンセリング行く→先生の顔を思い出す→キュンキュンして泣ける
これを2回くらい繰り返した時、「これはヤバイ」と思いました。
先生への恋心に似た執着も「気のせい」と分かってます。
冷静に見ると、お腹が少し出た、どこにでもいそうな普通のオジさんです(←失礼!)。それに、先生の個人的な情報は何も知らないのですから、急速に恋に落ちる要素はないのです。
でも、この胸キュン感もリアル…このままだと、先生のことを考えるあまり、治療に差し支えるのではないかと不安になりました。
とはいえ、正直にこのことを告白するのも気が引けます。
「(ババアのくせに)やっかいなクライエントだな」と嫌われることや、これが理由で治療が中断されたらどうしよう…といった心配もしました。
しかし、辛いものは辛い。
あたくし、秘めておくことができないので、すぐにカミングアウトしました。あとは委ねる!
で、先生の反応は…。
「あなたは、心理学の知識が中途半端で、考えすぎ!」
まあ、要するにそういうのは先生のアンダーコントロールで行われていることだから、変に抵抗しないで浸っちゃってください、ということでした。
…そうか、そうですよね。だいたいが、考えすぎなんです。だから病んじゃうんですよ(病んでるから考えすぎになるのかとも思うのですが)。あはは。
そうして、な〜んだ、浸っちゃっていいんだ〜って、安心して帰ったら…帰ったら…あれ?
あれれ?
なんだか、1ヶ月間に渡ってあたくしを包んでいたあの甘美な安堵感は、
淡雪のように消えてしまったのでした…。
もう? ちょっと…っていうか、だいぶ寂しいです…。
陽性転移の巻 劇終!!!
※2017年12月12日追記。
当時はこんな風にまとめたのですが、
結局のところ、陽性転移は形を変えつつ、現在もまだ続いている有様です。
そんな1ヶ月程度で終わるもんじゃなかったですね。トホホですね。
続きがありますので、ご興味とお時間があれば是非…。